ポタガールリーダー絹代の自転車ライフ特別編 女性にススメたい、ハンドルとステムの調整
ポタガールリーダー絹代の自転車ライフ特別編 女性にススメたい、ハンドルとステムの調整
更新日:2019年9月27日(金曜日)
スポーツバイク、特にロードバイクには、楽しいだけでなく、美脚やメンタルケア、血行改善など、女性にもオススメしたいメリットがたくさんあります。ですが、ロードバイクに乗る女性は、増えそうでいて爆発的には増えない現状があります。この原因には、バイクに乗るハードルの高さがあるのではないかと思うのです。
今回は、手持ちのバイクがしっくりこない方にも役立てていただけるよう、パーツを替えることで、ぐっとバイクを操りやすく、乗りやすく変えられる方法について模索してみました。
もしかして、ロードバイクが大きい?
軽快車(ママチャリ)やキッズバイクはホイール径で自転車を選びますが、ロードバイクの場合、身長190cmの人も、145cmの人も、一般的には「700C」というサイズのホイールをつけて乗ることになります。「700C」は軽快車でいうところの26と27インチの間くらいのサイズ。26インチを超えたら、一般的な女性には、少々大きい感覚ではないでしょうか。フレームは当然小さくするとしても設計上の限界もあり、一般的な日本人女性の身長では、乗りにくくても不思議ではないでしょう。
FLOATMIX266-K RD 26インチの軽快車。そうそう、これまでの自転車は車輪のサイズで選んできたのでした。
さらに、私は手が小さくて、ブラケット部分を握って、ブレーキやシフトチェンジ(ギアチェンジ)をするのも難しく、長い下り坂などで、ブレーキを握り続けるのは至難の技。手が小さくても使えるコンポーネントを選んで使ってきました。
女性の中には、自転車のパーツやコンポーネントに興味がなく、知識のないまま販売店で見た目が気に入ったロードバイクを買ってしまう方々も少なくないようです。そうなると、違和感が生じ「乗りにくい」「操作できない」「辛くて楽しくない」と感じ、乗り止めてしまうことになりかねません。もったいない!
実は、近年、小柄な日本人でも確実に扱え、快適に乗れるようなパーツやアクセサリーが増えて来ているのです。そこで、日本人女子でも快適に乗れるロードバイクを組んでみようかと思い立ちました。
手が小さくても操作可能な神レバー
私がロードバイクを組んでみようかと思い立ったのは、このレバーに出合ったのがきっかけでした。
衝撃的に操作が楽だったこのレバー。
借りた自転車なのにノーストレスで、ライドが楽しく感じました。
シマノの油圧ディスクロード向けの「ST-R7025」というレバーです。レバーがライダー側に4mm近くなっており、さらにレバーが外側にせり出しているので、手が小さくてもリーチすることができ、操作しやすくなっているのです。
レバーの外側がせり出しているため、小さな手でも無理なく届き、操作できます。
がんばらなくても軽い力でスピード調整や停止ができるため、アップダウンもまったく怖くない!お借りした自転車なのに、自分との一体感すら感じることができ、このバイクで走ることがすごく楽しくて感動しました。
これまでシマノのコンポーネントは、手が小さな方には、少々値は張れど、握り部分の小さな電動のコンポーネントが推奨されてきたのですが、これならまったく問題なし。ストレスがないばかりか、安全性もぐっと上がります。
ポタガールのみんなにも、触ってみてもらいました。
「わ、近い!」「操作がすごく楽!」と感動の声が上がります。
開発したシマノによれば、手の小さな人は握力も弱いことが多く、確実に操作できるディスクブレーキで提案することになったそうです。ディスクブレーキは雨でも制動能力も落ちませんし、総合的に女性にオススメできるコンポーネントです。
「このレバーなら扱える」という確信があり、一台組んでみようかと思い立ちました。ディスクブレーキのコンポーネントで組める私サイズのフレームを探していたところ、ホダカさんのNESTOにぴったりなフレームがあることがわかりました。やった!
触って感動する小島さん。
レバーが内側に近いから、下ハンドルも持ちやすい。
快適に乗るには「トップ長」がキモ
今回使用することになったのは「ALTERNA DISC-A」というロードバイク。完成車で139,000円(税抜)のお値打ちバイクです。
エントリー層向けの価格に設定されたお値打ちバイクALTERNA DISC-A
一番小さいフレームは440サイズ。適応身長が150cmからとなっており、これを使用することに決めました。
ところが、またがってみると、思いのほかハンドルが遠く感じます。適正サイズの範囲内ではあるのですが、私自身は、この状態で長時間乗る自信が持てませんでした。
ブラケットを握ってみます。乗れるのですが、気楽には乗れないかも。
次々またがってみますが、やはり少し遠いと感じるメンバーが多いようです。
ハンドルが遠いと、サドルにお尻の前の方を押し付けてしまうので、痛みも出やすくなりますし、腰を傷めている方は、腰痛も誘発しやすくなります。ハンドル操作も疲れるのでライドも楽しみにくくなりますし、視線が落ちがちになり、安全面でも好ましくないのです。
なぜこういう設計になるのか、ホダカさんに尋ねてみて、謎が解けました。ロードバイクとはレーシングバイクであり、深い前傾姿勢によるレースペースで走る前提で設計されているため、そこから適正身長をはじき出しているのだそうです。
なるほど!深い前傾で乗るのであれば、確かにぴったりです。特にこのNESTOは、主には男性のライダーを想定したブランドで、レーシーに走る想定で設計されているとか。
体幹がしっかりしており、空気抵抗の少ない深い前傾姿勢を長時間取れるレーサーでならばよいですが、私のように速さを極めない乗り方をする一般人にとっては、ハンドルがもっと近く、身体をもう少し起こしたポジションで、ゆったりと乗れる方が快適で無理がなく、レバー等の操作も楽で、安全性も上がりそうです。
特に女性には腹筋の弱い方も多く、表示された適正身長は「参考」として捉え、あくまでも実際の乗り心地でフレーム選びをするべきであることが分かりました。
「ハンドルとサドルを近づけよう大作戦」
ハンドルとサドルの距離が快適性を左右し、ゆったり乗る女性の場合は短めの方がいいことが分かりました。
すでにフレームは決まっているので、パーツ類を変えることで、この距離を近づけていきます。調整の選択肢となるのは、ハンドルと、ステム、サドルの位置であり、最もメジャーな解決法は、ハンドルとフレームをつなぐパーツであるステムの変更です。
デフォルトで付いているのは長さ80mmのステム
今回の車体には80mmのステムがついていますが、60mmのステムに替えれば20mm距離を縮めることができます。
ただし、ステムを縮めるとハンドルとフォークの距離が近づき、ハンドル操作が不安定になるというデメリットがあるため、60mmステムはあまり使いたくないところ。
そこで、東京サンエスが扱うディズナというブランドの特殊なハンドルの存在を思い出しました。
独特なカーブを描くニーザーハンドル
お借りしてきたのは「ニーザー=『どちらでもない』」という意味を持つ言葉をあてがわれた、ドロップハンドルのようでありながら、肩が上に上がったような、独特なカーブを描いたハンドルです。カーブが向こう側に向かっていくというより、ライダー側に近いところにあり、下ハンドルを握っても、フラットバーと同じくらいの距離で握ることができます。ポタガールのメンバーで、ハンドルの比較をしてみることにしました。
回転させることでまたさらに変わりますが、上体をゆったり起こした姿勢でもハンドルが握れるようです。
「あ、なんだか握りやすい」ニーザーハンドルの不思議なカーブには理由がありそうです。/ニーザー2ハンドル
この日揃ったメンバーは、バイクの適正身長である150cmは超えていましたが、160cmの私を含め、150cm台のメンバーは、完成車の状態だと少しハンドルが遠いと感じるようです。
このハンドルをニーザーハンドルに替えると…「近い!」「すごく楽!」思わず笑みがこぼれます。
劇的にハンドルが近くなりました。腕にも視線にも余裕が出て、ゆったりとハンドルコントロールできそうです。
この距離でブラケットを握ることができれば、下りも全然怖くない!体を起こしたポジションになるため、気楽にライドを楽しめそうです。
ちなみに、このハンドルは角度を変えたり、ブラケット等の取り付け位置を変えることで、好みのポジションをかなり幅広く選ぶことができるのです。
ハンドルの角度やブラケット取付位置の違いで、ポジションを変えて乗れるのもこのハンドルの魅力
上の方に取り付ければ、今回狙う楽なポジションになりますが、下の方に付ければ、深い前傾のタイムトライアルにも使える戦闘的なポジションに。下ハンドルの幅が広く、オフロード使用でも好評なのだそうです。なかなか奥が深い!
このハンドルを採用するとして、ステムをどうするか、東京サンエスの上司(かみつかさ)さんに相談したところ、「いまはステムの角度が73度のものがついていますが、これを84度のステムに替えることで、ハンドルを15mmくらい上げることができ、楽に乗れるようになりますよ」との回答が。
73度と84度。ステムの角度はかなり違う!これだけでハンドルを握る位置は大きく変わることになりそうです。
なんと!ステムに角度があるのは、なんとなく聞いていましたが、ハンドルの角度が変わり、上向きになることで、前傾を浅く、楽に乗れるようになるとは。角度の話はマニアックに響きますが、心得ておくメリットはありそうです。
ステムを84度に変更すると、また一気に快適性が上がります。下ハンドルを持っても、この余裕。もう下りも怖くないかも。
ここで、80mmの84度ステムを採用決定!ステムの長さは変えないため、操作性もそのままに、乗り味をより楽なものに変えられそうです。
サドルもレール上を動かすことで、前後位置を微調整できます。
これだけでも、もう十分にハンドル操作は楽になりそうですが、サドルも前後に動かすことができるため、まだハンドルが遠いと感じたら、サドルを前に出すことで、トップ長をより縮めることができます。(ただし、ペダリングしにくくなるため、そう大きくは動かせないのですが。)
他のハンドルも試しに握ってみました。
裏を凹んだ構造とし、径を細くしている「One by esu」のグランモンローSL。握りやすく、握った時にも安心感があります。
また、より快適性やハンドルコントロールを上げ、気楽に乗れるようにする工夫として、ハンドルの太さという要素もあります。手の指が回りきらない太さのバーを握ると不安や恐怖心を煽られますが、無理せず手の指でぐっと握りきれる太さのバーなら、安心感が持て、実際に無理せずコントロールすることができます。
ハンドルというと幅だけで選びがちですが、径(太さ)や握り心地を試した上で選んだほうがよさそうです。
薄手のバーテープの方が快適に乗れることも。よく検討しましょう!
また「快適に乗る=振動吸収をしてくれるバーテープ」と選びがちですが、クッション性の高いバーテープは、厚みがあることが多く、巻くとハンドルが太くなって握りにくくなることもあるようです。手が小さな方などは、あえて薄手のバーテープを選んでみると、バーテープを巻いたあともハンドルの握りやすさを保てて、快適に乗れるかもしれません。
今回、ハンドルとステムを変更し、幅広レバーを使うことで、男性向けだったお値打ちバイクを、女性たちにも快適に乗れるよう変えられる見通しがつきました。
こういったパーツ変更でポジションが変えられるなら、もうすでに買ってしまったバイクも、乗りやすく改善できるということになります。今の乗り心地に満足していない方は、可能性をチェックしてみる価値はありそうですよ!
このバイクに「乗れる」確信を得て、一安心。さて、次は見た目です!
実は、現状のこの商品は、男性を想定したルックスになっているとのことで、どうしようかと悩んでいたら「女性への提案ということであれば、フレームをオリジナルのカラーで塗るところから考えませんか?」とホダカさんからの、すごいご提案があったのです!
ポタガールたちに、女性たちに「このバイクなら乗りたい」と思ってもらえるようなフレームデザインについて、一緒に考えてもらうことになりました。(こちらの詳細は、WORLD OF SAITAMAへ)
このバイクでは、ルックスでも、快適性でも、日本人女性が「乗りたい!」と評価してくれるようなバイクを目指したいところ。続報もまた私のこのコラムでお伝えしていく予定です。どうぞご注目ください!